このページでは、日本における包茎に対する考え方について詳しく解説します。
包茎とは
包茎とは、陰茎の先端部分である亀頭が、包皮で覆われている状態を言います。
包茎という言い方は、陰茎に対する言葉ではなく、陰茎の状態を示す言葉です。
日本ではいつ頃から「包茎」を認識したのか?
近年の日本では、包茎手術を受ける人が非常に多く、包茎治療を行うことが、昔に比べると一般的になって来ました。
そもそも包茎という状態が日本で認識されるようになったのはいつ頃からでしょうか?
包茎は手術した方が良い、と日本で考えられるようになったのはいつ頃からでしょうか?
この章では、包茎に対する考え方について、歴史的な背景などを見ながら解説します。
古代・中世における日本の包茎
日本の古代や中世の文献には「割礼」や「包茎」といった記述や記録はほとんど見られません。
宗教的理由から行われる割礼(ユダヤ教・イスラム教など)は日本には伝わらなかったため、包茎という状態が特別に注目されることもありませんでした。
ただし万葉集や平安文学などには、性に関する記述はあるものの、包皮の有無や形態に関する表現、すなわち包茎は確認されていません。
江戸時代における日本の包茎
日本の医学が「蘭学」などを通じて西洋化する中で、人体解剖や性器の構造に関心は高まりましたが、包茎という言い方や病名、または概念が普及していた証拠は乏しいです。
一部の漢方医や医書に「陰部の皮がかぶさる」といった症状の記録がある可能性はありますが、包茎そのものは一般的な問題意識ではありませんでした。
明治~大正時代における日本の包茎
明治維新後、西洋医学が日本に導入される過程で、包茎(phimosis)という医学用語が翻訳され、医学的に病気のひとつとして認識され始めました。
軍隊(徴兵制度)における身体検査で、性器の状態がチェックされるようになり、この時に包茎が一部問題視されるようになった、とも言われています。
また、明治から大正期の医師による記録では、排尿困難や炎症を起こす真性包茎が、手術の対象として扱われるようになりました。
戦後における日本の包茎
戦後になると、米国の影響を受けて割礼および包茎手術が、各メディアを通じで紹介されりようになりました。
特に1950年から1960年代以降、泌尿器科やマスメディアによって「包茎=恥ずかしい・不潔」といったイメージが広まりました。
この時期から、美容そして衛生目的の包茎手術が宣伝され、現在に至る「日本独特の包茎意識」が形成されました。
なお割礼に関しては、別のページで詳しく解説しているので、そちらもご覧ください。
日本で包茎が社会問題化した背景
日本では包茎が良くない状態であること、そして問題であることとして認識されるようになった背景には、どのような経緯があるのでしょうか?
この章では、日本で包茎が社会問題化した背景について解説します。
米国文化・医学の影響
戦後の進駐軍を通じて、米国の医学や衛生観が日本に持ち込まれました。
アメリカでは19世紀末から「衛生的」「性的に優れている」という理由で割礼が一般化しており、その価値観が日本の医療関係者に伝わりました。
これにより「包茎=不衛生」「包茎=治療対象」という考え方が医学的に広まりました。
自衛隊・学校検診での包茎に対する指摘
戦後の徴兵制は廃止されましたが、自衛隊や学校での身体検査・保健教育において、包茎が指摘されることがありました。
これが「包茎=矯正すべき状態」という印象を若者に植え付けることにつながりました。
マスメディアと広告の影響
1960年代以降、週刊誌や男性向け雑誌で「包茎は恥ずかしい」「女性に嫌われる」といった記事が盛んに掲載されました。
泌尿器科や形成外科、さらには自由診療の包茎専門クリニック等が広告を出し、「包茎手術で自信を取り戻そう」というキャンペーンを展開しました。
これにより、医療上の問題がなくても、美容整形や自己のイメージ改善として包茎手術が広まって行きました。
衛生・性の価値観の変化
戦後の公衆衛生の改善、石鹸・入浴習慣の普及により、日本では清潔感が強く意識される社会になりました。
それと同時に、性に関する情報(雑誌・映画・漫画など)が急速に解禁され、性器の形や見た目への関心が高まりました。
その中で「包茎=不潔・未成熟」そして「包茎手術すれば一人前」といったイメージが強調されましたのもこの時期からでした。
包茎手術の商業化と社会的不安の利用
包茎そのものは医学的に必ずしも問題ではありませんが、包茎そのものが不安商法として利用されました。
「包茎手術しなければ恋愛や結婚に不利になる」という広告表現が若者の心理を突き、日本における包茎手術の需要を大きく拡大しました。
これにより「包茎=社会的に克服すべきもの」という認識が一気に広まりました。
日本における包茎に対する不安への煽り
日本において、昭和期の包茎に対する不安はどのようなものだったのでしょうか。
この章では、昭和当時の雑誌広告や新聞などのメディアの報道を取り上げながら、日本の国民に対してどのように包茎の不安が煽られていったのかを解説します。
雑誌広告による包茎に対する不安の商業化
昭和の時代に、某雑誌『宝〇』では、包茎手術を推奨する広告が乱立していました。
「君の勇気に喝采!」や「もう、前は隠さない。」などのキャッチコピーが並びました。
ある専門クリニックの広告では、見開き2ページに加え別のページでも包茎について取り上げられ、「包茎治療最先端緊急レポート」などと銘打って、女性からの辛辣なコメントまで掲載されていました。
また、様々な雑誌では「包茎矯正グッズ」などの通販広告も載せられ、「誰にも知られず自宅で包茎を矯正」「ケタ違いの効果」などの過剰な表現で、包茎に対する身体への不安を煽り、消費に誘導していました。
こうした雑誌広告は、医療が必要かどうかにかかわらず、「恥ずかしい状態」としての包茎のイメージを強化し、包茎に対する不安を増幅させていました。
女性目線を利用した包茎に対するイメージ作り
社会学者・澁谷知美氏の研究によれば、1970年代以降、青年誌(例:『平凡パンチ』『週刊プレイボーイ』『ホットドッグ・プレス』など)に掲載された多くの記事は、実質的にスポンサー(医療クリニック)によるタイアップ記事であり、女性の「包茎は不潔でモテない」といった言説が戦略的に用いられていました。
また、こうした記事では女性たちの座談会風の意見や、包茎で悩む男性の悲惨な体験、医師による解説、そしてクリニック紹介がワンセットで構成され、読者に対して心理的圧迫(恥や不足感)を与える構造が形成されていました。
某高〇クリニックの院長の証言によると、「雑誌の記事で女性に『包茎の男って不潔…』と言わせて、包茎治療の土壌を作った」と語っており、クリニックと出版社が手を組んでいたことも明らかになっています。
包茎治療のターゲットの拡大、中高年層へのアプローチ
1980年代後半以降になると「包茎は介護される時に恥ずかしい」または「ゴルフ後の入浴で包茎がバレたら困る」あるいわ「死後、包茎は湯灌で恥をかく」といった、中高年向けの恐怖喚起型広告も登場しました。
当時の雑誌によるタイアップ記事が中高年向けメディアにも広がり、加齢に伴う包茎の羞恥心の延長線上で、包茎手術が喚起される構図が確立されていきました。
この時期には、まだ医学的な必要性が低い仮性包茎が「治療対象」として明確に設定され始めました。
包茎に対する戦後の商業利用
書物の『日本の包茎—男の体の200年史』(澁谷知美著/筑摩選書)では、もともと包茎に対する「土着の恥ずかしさ」は存在したものの、戦後「作られた恥」の構築こそが問題であることが指摘されています。
日本において戦前から戦中にも、包茎と性病を結びつけて広告する論調があった、という指摘はありますが、それよりも圧倒的に影響力を持ったのが、戦後の雑誌や広告による、包茎に対する不安の商業利用です。
現在の日本における「包茎」の位置づけ
上で記してきたように、日本には割礼という文化や風習がまったくありません。
しかし、極めて多くの男性が、「包茎」という言葉を認知しています。
日本では包茎という状態がどのような位置づけになっているのか、以下にまとめてみます。
子供の時は包茎が当たり前
生まれたばかりの男の赤ちゃんは包茎です。その後、幼稚園や小学校へ進んでも、ほとんどの男の子は包茎のままです。
日本では割礼の文化や風習がないので、子供の時は包茎であることが当たり前になっているので、包茎が問題視されることは、まずありません。
親が子供を病院に連れて行って、包茎手術をお願いしても、子供の包茎手術は断られます。
専門のクリニックにおいても、包茎手術を行うのは「18歳以上」と、年齢制限を設けている場合がほとんどです。
大人の包茎は恥ずかしいこと
中学生くらいまでは、まだまだ包茎が当たり前、と言っても過言ではありませんが、中学生以降になると身体の成長と共に、陰茎の包皮がむけてきて、亀頭が露出するようになります。
亀頭の露出するタイミングは、個人差が非常に大きいので、高校を卒業してから亀頭が露出する人もいます。
しかし、包茎を気にするタイミングは、中学生から高校生の思春期です。
林間学校や修学旅行、そしてクラブ活動の合宿やキャンプ等、学校にはいろいろな宿泊を伴う行事があるので、包茎に限りらず、陰茎の大きさなどを気にするようになります。
このことは男子学生にとっては、ごく自然なこと、と言って良いと思います。
そして、包茎ではない友達の陰茎を見ることで、自分が包茎であることに恥ずかしさを感じるようになります。
大人になっても包茎のままだと、さらにコンプレックスになり、恥ずかしさが強くなります。
こうして日本では、大人の包茎は恥ずかしいこと、として認識されているのが現状です。
包茎手術を行うシニア世代
近年の日本において、シニア世代の男性が包茎手術を受けることが非常に多くなりました。
理由は、老後の介護の時に恥ずかしい思いをしたくないからです。
また、年を取るといろいろな病気や疾患などで、下半身を露出することも想定されます。そんな時も、病院などで恥ずかしい思いをしたくない、と考えている男性が非常に多いのです。
このような男性の考え方は、日本人特有のもの、という言い方もできます。
日本における介護や病院などの施設で働くスタッフは、女性が圧倒的に多い、ということが非常に大きく関係しています。
介護や福祉、そして医学の進んだ先進国では、男性の対応は男性スタッフが、女性の対応は女性スタッフが行う、という考え方が一般的で、多くの先進国ですでに実践されています。
日本の介護福祉、そして医学はまだまだ遅れている部分が多々ある、と理解する必要があります。
ちなみに、日本では産婦人科の医師が男性ばかり、という状態ですが、医学の先進国では考えられないことのようです・・・。
なお包茎に関しては、別のページで詳しく解説しているので、そちらもご覧ください。
日本人男性の包茎の割合
日本人男性の包茎の割合はどれほどなのでしょうか。
各クリニックや専門医などが、日本人男性の包茎の割合について言及していることがありますが、真意について解説します。
日本人男性の真性包茎の割合
真性包茎とは、包皮口が極端に狭く、陰茎の先端部分である亀頭を露出できない状態を言います。
勃起時においても亀頭が包皮で覆われています。
日本人男性の1~5%程度が真性包茎と言われています。
この割合(数字)はかなりの幅がありますが、正式に調査が行われていないため、包茎手術や治療を行った実績数などを元に算出されたデータになります。
また真性包茎の場合は、排尿障害や陰茎が炎症を起こすなどのリスクがあるため、医学的手術、すなわち包茎治療の対象になります。
日本人男性の仮性包茎の割合
仮性包茎とは、先端の亀頭部分が包皮で覆われていますが、勃起時に亀頭が露出する状態のことを言います。
手で包皮をむくことで亀頭を露出させることも可能です。
仮性包茎は、日本人男性に最も多い包茎のタイプになります。
調査によって差はありますが、日本人男性の60~70%程度が仮性包茎と言われています。
真性包茎と同様に、正式に調査が行われていないため、包茎手術や治療を行った実績数などを元に算出されたデータになります。
仮性包茎は医学的には病気ではなく、生理的なバリエーションの一つである、ということを理解することが大切です。
しかし日本では、戦後の広告や医療マーケティングによって、包茎は「恥ずかしい」「不潔」と認識されているのが現状です。
日本人男性の完全露出型(包茎ではない)の割合
完全露出型とは、包茎ではなく、平常時から常に亀頭が露出している状態のことを言います。
日本人男性の30~40%程度が完全露出型と言われています。
なお、日本人が包茎手術を受けている割合に関しては、別のページで詳しく解説しているので、そちらもご覧ください。
日本における包茎についてのまとめ
日本における包茎についての考え方をいろいろと解説しました。
昭和の時代から平成、そして令和へと変わり、日本人の包茎に対する考え方も変わって行ったことが分かりました。
しかしそんな変化も、日本のメディアや専門のクリニックによる宣伝が、日本人に極めて大きな影響を与えた、という事実も理解できました。
現在も依然として多くの日本人男性が包茎で悩んでいます。そして包茎手術をするかどうか、悩んでいる男性も非常に多いです。
実際に包茎手術を経験した多くの人が、包茎手術をして本当に良かった!と満足しているので、一歩踏み込んで包茎手術をしてみてはいかがでしょうか。
多くの専門クリニックにおいて、無料相談や無料のカウンセリングが受けられるので、勇気を出して相談してみることをおすすめします。