このページでは、アメリカにおける包茎に対する考え方について解説します。
アメリカにおける包茎手術の歴史
アメリカでは包茎治療がいつ頃からおこなわれるようになったのでしょうか。
この章では、アメリカの包茎手術のについて、歴史的な背景について簡単に解説します。
19世紀後半〜20世紀前半の包茎手術
アメリカでは衛生観念の普及や、当時の医学的通説(包皮が性病や不衛生の原因とされる)が広まり、包茎手術すなわち割礼が推奨されるようになりました。
特に「自慰防止」「清潔保持」の目的で包茎手術は盛んに行われました。
第二次世界大戦後の包茎手術
第二次世界大戦後のアメリカの包茎手術に関しては、軍隊での手術(割礼)が衛生上有利とされ、この考え方が一般家庭にも一気に広がりました。
そして1960年代には新生児の8割以上が包茎手術(割礼)を受ける時代となりました。
アメリカの包茎手術における医学的評価の変遷
次に、アメリカの包茎手術における医学的評価の変遷について、簡単に解説します。
1990年代までの包茎手術の医学的評価
この頃のアメリカでは、「包皮は不必要」または「包茎手術(割礼)は感染予防になる」という考え方が主流でした。
1999年の米国小児科学会(AAP)の声明では、「包茎手術(割礼)には、ある程度の医学的利点はあるが、必須ではない」という発表がありました。
あくまでも、親の考えを尊重し、包茎手術を行うかどうかは、親の選択に委ねるという姿勢を示しました。
2012年以降の包茎手術の医学的評価
米国小児科学会(AAP)は再度「包茎手術は、HIVや性感染症予防、尿路感染症リスク低減など医学的利点は確かに存在する」という報告をしました。
ただし「包茎治療は全員に義務づけるほどのものではない」としています。
そして現在のアメリカでは、「包茎手術はメリットはあるが必須ではない。親が宗教・文化・価値観に基づいて、包茎手術を行うかどうかを判断するべき」という立場が主流になっています。
なお包茎に関しては、別のページで詳しく解説しているので、そちらもご覧ください。
宗教や文化的側面から見たアメリカの包茎手術
ユダヤ教およびイスラム教では、宗教的儀式として包茎手術(割礼)は必須となっています。
従って、アメリカのユダヤ系・イスラム系コミュニティでも、包茎手術は当然のものとして行われます。
またキリスト教徒や非宗教層でも、20世紀には「清潔」「常識」として包茎手術(割礼)を行う家庭が多かったため、文化的に「割礼済みが普通」という認識が長く続きました。
アメリカにおける包茎手術の社会的な意識
次に、アメリカにおける包茎手術の社会的な意識について簡単に解説します。
包茎手術を行うアメリカ人の世代や時期について
アメリカでは、60歳以上の男性は包茎手術(割礼)を行っている人が極めて多いですが、若い世代では包茎手術を受けている割合(割礼率)が低下しています。
また近年のアメリカでは、大学病院や小児病院で行われる包茎手術(割礼)の中心年齢が、新生児期に集中しつつあり、幼児期またはそれ以降の年齢での包茎手術(割礼)が減少してきている、というデータがあります。
時代の変化による包茎手術の割合
アメリカにおける包茎手術を受ける割合(割礼率)は、時代の変化に伴って変わっていきました。
1960〜70年代では、包茎手術を受ける割合(割礼率)は80%を超えていました。
2020年以降の現在では、地域差はありますが、アメリカでは全体の約50〜60%の人たちが包茎手術(割礼)を行っています。
アメリカの西海岸では3割程度の割礼率、南部・中西部は7割前後の割礼率と言われています。
また近年のアメリカでは州単位で、低所得者向け公的保険による包茎手術(割礼)をカバーしない地域が出てきていて、このことによって新生児の包茎手術(割礼)の割合が引き下げられる可能性があります。
割礼に関しては別のページで詳しく解説しているので、そちらもご覧ください。
アメリカ人の包茎(未割礼)への意識について
アメリカでは1980年頃は、包茎は「不潔」「珍しい」と見られがちでしたが、現在における包茎は「自然なもの」「包茎手術は親の選択」として、包茎であることが受け入れられる傾向が強まっています。
包茎と性的機能の関係について
アメリカでは性行為において、包皮がある方が感度を保ちやすいとする研究があり、「性の快楽を守るために包茎手術(割礼)をしない」という考え方もアメリカでは増えています。
アメリカにおける包茎そのものの捉え方について
小児期の包茎は自然に解消する場合が多く、アメリカでも「医学的処置の必要は少ない」とされています。
ただし、真性包茎(排尿・性交障害を伴う)の場合のみ包茎手術(割礼または包皮形成術)を行うことがアメリカでは推奨されています。
従って「包茎=病気」という捉え方ではなく、問題があれば治療する、という姿勢になっています。
アメリカにおける割礼に対する賛否の声
アメリカでは割礼(circumcision)、そして包茎(包皮を残すこと・未割礼)の問題について、一般人の間でも様々な意見が交わされています。
この章では、インターネットの掲示板やエッセイ、メディアによる意見記事、そして団体の活動などから見える、包茎に対する「生の声」を、肯定的・否定的・中立的な観点から具体例を挙げて解説します。
包茎(未割礼を支持)を支持する意見
アメリカでは「Intactivists」と呼ばれる、「人が自分で決められるまで、割礼などで身体を変えるべきではない」とする立場の人々が、比較的活発に意見を発信しています。
アメリカで掲載されたある記事では、包茎(未割礼)であることを「自然な身体の状態 (intact body)」としてポジティブにとらえ、「割礼は必要のない医療行為」であり、将来の性的・感覚的な影響を懸念する声が強いことが紹介されています。
また、Redditなどのサイトでは、包茎(未割礼)であることを誇りに思い、「intact(損なわれていない)」という言葉を好む人が多くいます。
インターネット上でのコメントでは、「包茎であることは、清潔さにはほぼ関係なく、本人の衛生習慣の問題」という意見があります。
また「包茎(未割礼)のペニスとのセックスは、摩擦が少なく滑らかで、唯一の欠点は匂いだが、衛生管理で解消できる」というコメントもありました。
包茎手術(割礼)に対して肯定的・中立的な意見
アメリカには「包茎手術(割礼)は医療的・衛生的利点がある」と考える人々がたくさんいます。
医学的研究や感染予防の可能性を理由に、子供の包茎手術(割礼)することを選ぶ、という母親がアメリカにはたくさんいるのが現状です。
米国小児科学会などの医学団体が、「包茎手術(割礼)には新生児の尿路感染症や成人男性における性感染症のリスク低減、陰茎がんの予防などの利益がある」という立場を示していて、これに同意する親や医師がアメリカには一定数存在します。
また、中立的かつ慎重な意見としては、「親や本人の価値観・文化・宗教を考慮すべき」または「医学的リスク・ベネフィットをきちんと説明されたうえで包茎手術をするかどうか判断すべき」という姿勢がよく見られます。
包茎手術(割礼)に対して否定的・批判的な意見
包茎手術(割礼)に反対、または懸念を持つ前理科の人たちからは、以下のような声があります。
●同意なしに身体を変えることへの倫理的批判
包茎手術(割礼)は、乳幼児期に本人の意志なしに行われることが多いため、「身体的な自己決定権の侵害だ」とする意見があります。
●性的感覚や満足度の影響への疑問
包茎手術(割礼)によって、包皮がなくなることで感覚が変わり、摩擦・潤滑などの問題を引き起こす可能性を感じる人が一定数います。
また未割礼の人が、包茎手術(割礼)の経験者と比べて、動きや感度で違いを感じる、という体験が語られることがあります。
●見た目や社会的プレッシャー
包茎手術(割礼)を受けていない人が、「普通とは違う」「恥ずかしい」「パートナーにショックを与えるかもしれない」といった不安を持つ例があります。
アメリカでは反対に、包茎手術(割礼)が「当然」と思われている環境で、未割礼の人が周囲から質問や非難を受けることがある、という意見もあります。
また衛生や病気リスクに関して、包茎手術(割礼)には利点があるという医学的報告がある反面、それを過大視するべきではない、と指摘する意見もあります。
アメリカにおける包茎の世代差・文化差・地域差について
アメリカにおける包茎を考える上で、一般意見の中で特に目立つのは、以下の差異についてです。
アメリカでは若い世代ほど、包茎手術(割礼)に対する強制性や「割礼が当然」という考え方に疑問を抱くことが多いのが現状です。
これは、インターネットにおける情報やSNSを通じて、未割礼や割礼の利点・欠点を比較する機会が増えているためです。
インターネット上のコメントでは、「若い男性の未割礼者が増えてきた感じがする」「昔より割礼率は下がっている」という意見が複数あります。
またアメリカでは、宗教的・民族的バックグラウンドの影響も強いことも特徴的です。
ユダヤ教・イスラム教家庭では宗教儀式として包茎手術(割礼)が重要視され、反対意見はほぼ考慮されないことが多いです。
一方、無宗教・宗教の関わりが薄いアメリカの家庭では、医学的利点・身体の自然な状態・自己決定の観点から未割礼を選ぶケースが増えています。
そして、アメリカでは地域差も非常に大きくあります
南部などでは、包茎手術(割礼)の習慣が長く根付いているので、割礼率が高く、割礼が「普通」とされる傾向があります。
それに対し、西海岸(カリフォルニア、オレゴン、ワシントンなど)や北東部などでは、未割礼への寛容さ・支持が比較的高い、という報告がインターネット上で増えています。
アメリカにおけるメディアの影響やその他活動について
アメリカでは、包茎手術(割礼)の利益を強調する医学団体やニュース報道がある一方で、未割礼者の権利や身体的・感情的影響を訴える市民団体・運動(intactivists)も活動的です。
例えば、「Intaction(ニューヨーク)」などが未割礼の利益を啓蒙する資料配布や講演を行っています。
また、「Bloodstained Men」というグループが、包茎手術(割礼)を受けた元未成年としての身体的および感情的な負傷を象徴する抗議活動を行うなど、包茎手術(割礼)に対する、痛みや感情的な側面を可視化しようとする動きがあります。
アメリカの包茎手術の費用について
アメリカでは多くの地域において、包茎手術(割礼)を行う習慣があり、非常に多くの人たちがアメリカ国内で包茎手術を受けています。
この章では、アメリカで包茎手術を行った場合の治療費用について、具体的な金額を挙げながら解説します。
アメリカでは包茎手術は保険が適用されるのか?
アメリカで行われる包茎手術は、保険が適用されますが、保険を利用して包茎手術を受けるためには条件があります。
保険が適用されるためには、包皮口狭窄、包皮炎、再発感染などの医学的な理由がある場合に限ります。
この場合は、各保険会社は包茎手術を「必要」と認めて、手術費用をカバーすることが多いです。
単なる美容目的や、宗教目的が理由で包茎手術を受ける場合は、保険は適用されません。
このような制度は、日本の包茎手術の保険利用と基本的にほぼ同じのようです。
なお、アメリカにおける保険の制度は非常に幅があり多種多様です。
ここでは、アメリカの保険についての説明は割愛します。
包茎手術で保険を使った場合の自己負担額はいくら?
アメリカで保険を利用して包茎手術を受ける場合には、住んでいる地域や保険会社の違いなどによって、そして契約している保険のプランなどによって、自己負担額は違いがあります。
全額無料になることもあれば部分負担になることもあり、その違いは非常に大きいです。
一般的には、保険が適用される包茎手術の場合の自己負担額は、0~1,000ドルくらいの範囲に設定されていることが多いようです。
生後間もない新生児の包茎手術(割礼)の場合は、0~100ドル程度の費用で行えるようです。
しかし上で記したように、アメリカでは州などの地域の違いによる政策の差が非常に大きいので、新生児の包茎手術(割礼)を保険でカバーするかどうか、違いがあります。
アメリカの包茎手術にかかる費用の総額
アメリカで包茎手術を行った場合にかかる費用の総額について、具体的に見てみましょう。
テキサス州では、成人が行った包茎手術の場合の費用の総額は、約3,200ドルだったというデータがあります。
その他の施設使用料や麻酔医師の料金:約2,500ドル
合計:約3,200ドル
別の州では、成人の包茎手術(割礼)費用の見積もりが、2,581〜5,600ドル、というデータがあります。
また別の州では、包茎手術費用の総額請求が非常に高く、約8,000ドルを超えた、というデータもあります。
カリフォルニア州における新生児の包茎手術(割礼)では、生後7週間以内の赤ちゃんの場合、手術費用は約150ドル、というデータもあります。
アメリカの今後の包茎手術の方向性と予想
アメリカにおける成人の包茎手術や新生児の割礼は、今後どのような方向に向かうのか、簡単に考察してみます。
今後のアメリカは、経済的・文化的な理由、保険制度の変化、民族構成の変化、未割礼支持の意識の高まりなどにより、包茎手術(割礼)の割合は下がる方向が予想されます。
ただし急激な変化ではなく、地域差や民族差を伴う漸進的な変化だと思われます。
そして、包茎手術に対して州レベルでの保健の適用・非適用の違いを是正する動きが出る可能性があります。
さらに、低所得家庭でも包茎手術(割礼)を行う選択肢が保たれるような、制度設計が検討されるかもしれません。
また包茎手術(割礼)を美容や慣習的な手術と見なすかどうかの政策論争が続くと予想されます。
そして包茎手術(割礼)そのものの法的かつ行政的な取り扱いが変わる可能性もあります。
アメリカの包茎に対する考え方についてまとめ
今回は、アメリカの包茎に対する考え方について記事にしました。
アメリカは日本と異なり、包茎手術を受けている人の割合が非常に多いことがわかり、少し驚きました。
そして一部のアメリカ人によって、新生児の割礼が習慣化されていることが分かりました。
アメリカはとにかく国土が広く、地域(州)による考え方の違いが非常に大きいことも理解できました。
包茎手術(割礼)についての考え方だけでなく、あらゆる分野において、地域差が極めて大きい状況のようで、これもまた驚きです。
しかし、包茎手術(割礼)をどのような位置づけにするのかを、アメリカは国も地域も国民も、しっかりと考える必要性を持っていることは極めて立派なことだと感じました。
アメリカの包茎事情について、このページが参考になれば幸いです。